カップの中のユートピア

手に持っている仏像を腹から30cm程離して持った。

｢カウントダウンするよー･･･さーん、にー、いちー･･･｣

ゴスッ！

｢う゛えっ!?｣

手を放された仏像は重力に従い、店長の上で鈍く重い音を響かせ
落とされた店長は短く太い唸り声を上げた、彼は腹を抱え唸る。

｢っ～～～～!!!｣
｢う、牛久がぁああああっ!!｣
｢･･･やっぱりな｣
｢わ･･･痛い･･･｣
｢店長、目覚めましたー？｣

イレルのすることを推測出来ていたジュンは溜息を吐き
リターナはまるで自分がやられたようにお腹を擦り眉を顰めた。
そして当事者のイレルはニッコリと微笑み問いかけるが
その肝心な店長はまだ腹を抱え痛みに唸っている
その時、奥からワインボトルを片手に持ち、ボトルを拭きながら来たのはソムリエ・ヴィノだった。

｢･･･何してんの｣
｢あ、ヴィノさん！｣

ヴィノは、ホールに腹を抱え転がっている店長と、それを見て微笑を浮かべるイレル
到底理解できないような大仏を持って半泣き状態のディスコと
その３人を見て唖然としているリターナとジュニオールを見て･･････

｢･･････｣

立ち去った。
そう、それはまるで何事も無かったように。

｢ま、待って下さい！妙な状況かもしれないですけど！｣
｢･･･いや、見てない｣
｢見てました！凄く凝視してましたよ!!｣

リターナは見て見ぬふりをしようとするヴィノを必死に引き止める。
ジュニオールはもうどうにでもなりやがれといったような表情で頭を抱えてかなり重い溜息をついた。
その時、床から聞こえた唸り声が消えていた。

｢･･･誰だァ･･･人の睡眠邪魔しやがったのは･･･!?｣
｢ほら！店長起きちゃいましたよ！｣
｢人がせっかく良い気分で寝てたのによォ･･･！｣
｢店のホールで寝ている方がよっぽど問題だぞ｣

ホールで爆睡していた店長が目を覚まし、安眠妨害を訴えていたが
彼からは予想もしないような発言をする

｢･･･何でお前ら俺の家に居んだよ｣

｢｢｢｢｢･･･え？｣｣｣｣｣

寝惚けているのか本気で言っているのか
店のホールを自分の家と勘違いも甚だしいが、彼はしてしまった。



｢て、店長･･･？｣
｢ここは店だぞ｣
｢大丈夫ですか？｣
｢･･･主に脳みそ。｣
｢店を家に勘違いするなんてある意味凄いよねー｣
｢バーカ、褒めんじゃねぇよ｣

｢｢｢｢｢いや、褒めてない｣｣｣｣｣


フロアにいる全員で店長に盛大な突っ込みをする。
そして、店長は自分がなぜ店にいるのか頭を抱えていた。

｢可笑しいな…昨日家帰ったはずなんだけどな･･･｣
｢昨日のこと覚えていないんですか？｣
｢あぁ、さっぱりな！｣
｢胸張っていうことじゃねえよ･･･｣




 

---

あとがき


第2話です。
今回はVasilicoの店長・イアンとソムリエ・ヴィノが登場しました。

見てお分かりかと思いますが、店長はバカです。
酒癖は悪いし、典型的なちゃらんぽらん野郎です←
でも愛すべきバカなので可愛がって下さい。

30越えでよろしければ(ｷﾘｯ)

今回も読んで下さってありがとうございます。


第3話は、ちょっと時代を遡りたいなぁと思います。　お楽しみに。

[0回]