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カップの中のユートピア

零れ落ちたのは、綴ったはずの言葉たち

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Quello.3






遡る、僕らの歴史を


そう・・・・・・
彼らの毎日がこんな日常になったのは数年前に遡る。

それはこの店が開店して間もない頃の話




数年前・・・・・・

開店して間もない“Vasilico”にピンクアッシュの髪をなびかせた
1人の少女がエントランスの前に立っていた

左手に握られているのはチラシ…そこには“スタッフ募集中”と書かれている
大方アルバイトの面接に来たのだろう


「・・・よし!」


意を決し、ドアノブに手を伸ばした瞬間…




「痛ぇえええッ!?」
「ひっ・・・!?」


聞こえたのは1つの悲鳴、何かの痛みを伝えるものだった


「俺に何の恨みがあって叩くのさ!?」
「恨みはねぇけどちゃんとしてろ」
「じゃあ叩くなよ!」


「(このお店、危ないんじゃ・・・)」


彼女に脳裏にこれから自分の身に起こるであろう
恐怖を想像し体を寒気で震わせた

悲鳴を聞いてから店に入るのを戸惑っていると目の前のドアが開いた


「あっ・・・」


開いたドアから出てきた人は・・・





「・・・あれ・・・お客さん・・・?」





青がかった黒髪の青年がドアを開けて声を掛ける
その青年は頭をさすっていることから悲鳴の主であることも分かった

驚いて声を上げられなかったが、彼女はハッとして我に返り青年に話し掛ける


「あの、私アルバイトの面接に来たんですけどっ・・・」
「アルバイトの面接・・・もしかして君がっ」


ぐいっ!


「うおあっ!?」


青年は突然扉の奥に引きずり込まれ、現れたのは
違う服を着た笑顔が印象的な茶髪の青年だった


「店長が言ってたアルバイト希望の子かい?」
「え、あ、はい・・・」
「とりあえず入ってよ、店長呼ぶから」
「はい・・・」


この時、まだ彼女は気付いてなかった。
初めて接した時は物腰柔らかった彼がいずれ毒を吐く
寧ろそれしか吐かなくなることを・・・


「ジュン、店長は?」
「居ねえ・・・今電話する」
「はいはーい・・・ごめんね、放浪癖あるから」
「あ、いえ・・・」


店長が放浪癖あるといい、店内では悲鳴が響くといい…
この店は一体どうなっているのかと彼女は内心でかなり焦っている


「・・・出ねえぞ」
「あらら、やっぱり?」
「こんな時に・・・メール入れとく」
「気付かないだろうけどね」



「(この店で働いていいのかな・・・)」



あとがき


第3話です。
今回は、ウエイター・リターナが働く前まで時間を戻しました。

多分時間軸を行ったり来たりすると思います。
もしくは過去をしばらく書き続けようかと思っています

次回もまだ時間軸をこのままにして書きます


ここまで読んで下さりありがとうございました。

次回第4話もお楽しみに…

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