カップの中のユートピア

ひどく陽の光が暖かい日のことだった。



見慣れた桜の並木は花開き、風が起こり吹雪すら起こしそうな陽気だった。
友人の誘いで外に出てきたが、春の日差しは久方に外の陽を感じる男にとって眩しすぎた。
外に出たものの、ただ友人についていくだけではあるものの
少し遠慮がちに吹く風は男の気分を優れさせるには丁度良かった。


「さ、次は何処行くか？」
「任せる。」
「おいおい、それはちょっと酷くないか？」
「そもそもお前が連れだしたんだろうが」
「あー･･･仰る通りで･･･」


所詮、こういった友人の誘いは彼の気まぐれであったのは常々気付いていたが
その気まぐれに付き合うのも悪くないと思えるようになっているのは自分に余裕が出来たのだろう。


「たまには、外出るのも悪くないか･･･」
「んぁ？なんか言ったかー!?」
「何でもねぇよ、」


かなり先を歩いた友人に溜息を吐きながらゆっくりと用水路沿いを歩く。
溜息を吐いたからか、少し俯いた顔を上げて視線を用水路に掛った橋の方にふと動かす。


「･･･！」


橋の上に居たのは1人の女学生であろう。
白地に紺青の着物に蘇芳の袴、長い髪は1つに結われている――――
この距離から確認出来るのは、これくらいが限界ではあるが
男がもう１つだけ確認出来たもの。


「笑ってる…？」


そう感じた刹那、風は先程感じたものとは異なる強さとなり桜吹雪を舞い起こした。
咄嗟の事に瞳を閉じたが、ゆっくりとまた瞳を開けると、女学生は空を見上げて
静かに微笑んでいた･･･それはまるで、彼女がその桜吹雪を待っていたかのように

そうしてどれほど時間が経ったか、否、時間が止まったようであった男は彼女を見ていた
向こうは全く気付く素振りもない、そう考えていた。
そう考えたと同時に、空を見上げていた彼女はふと、男の方を見て


また、静かに微笑んだ――――


ふらっと、男の世界は傾いたように思われた。
彼女を見て世界が廻るのではないか、と思うほどの眩暈が起こった。
すぐ視線を逸らしたものの、またその場所に視線を戻すが彼女はそこにはもう居ない。
“さくらの精”、そう呼べるような･･････


「潤、どうした？」
「･･･何でもねぇ」



橋の上にいたのは、ひどくさくらの似合う女性だった･･･――――



「（さくらの精、だなんて考えるようなのじゃないけどな･･･）」




さくら、はらりと舞ふ
（嗚呼、さくらがひどく目を廻すようだ）

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あとがき

まず和名の説明から。
リターナ→新宿理奈(あらじゅく_りな)
ジュニオール→更科潤(さらしな_じゅん)
この2人の和名はすぐに決まりました！(あ、ジュニオールはそのままなんですけどね)
そして、もう一人登場したのが、まだ本編未登場のバーテンダーです
マクシミリアン→津別大（つべつ_まさる）
基本決め方は、洋名(?)をイニシャルにしてそれに合う名前をつけています＞＜

そして肝心の話ですが…
軍人がこんな明るい時間に外うろつくかな？って思ったけど
頭でイメージした時、“将校×女学生(袴+ブーツ)＝ジュンリタ”が浮かんだのでそのまま採用。
しかもまだ2人は一言も交わしてないというお話←
パロではこんな風に2人が出会えば萌えるのに…(私が)

書いてる間にどんどん妄想が膨らむので、まだ続きそうです。
とりあえずいくつかのCPで書こうとか思ってます、ええ。
え？本編はどうしたって･･･？それを聞いてはなりませんぞ←



ここまで読んで下さりありがとうございました！

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